かのやまさんのblog

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ハーモニカおじさんの話

 阪急梅田駅とJR大阪駅の間にある横断歩道、ここの信号機には待ち時間表示がついていることで有名だ。ぼくも仕事帰りや休日によく通っているけれどいつも人だらけであんまりダラダラと歩いていられないような気分になる。ある休日も例によって梅田に出向き、広い横断歩道を渡って大阪駅側にたどり着いた。

 

 そこに、椅子に座っているオジンが一人。

 

 御堂筋南口の高架下通路に差し掛かるところでパイプ椅子に座り、ハーモニカを吹いていた。懐メロも懐メロ、藤山一郎東京ラプソディーである。一瞬通りがかっただけで「♪花咲き花散る宵も~」と判別がつくのはさておき、その様子をちらっと見て何となく「あ、すごくキマッてるな」と好感を覚えてしまった。通路の隅とはいえ人通りの多いところに座っているのだから状態としてはアンチャンや子供が座り込んでスマホをいじっているのと変わりないはずだ。オジンだとしても缶ビールを飲んでいたりスポーツ新聞を広げてたりという真似をしていたらそんなに良くは思わなかっただろう。本来邪魔に感じるはずが、あのハーモニカ一つで真逆に転じたことになる。

 

 そういえば20年以上前、阪急河原町の地下道で階段に腰掛けているオジンがアメリカ国家を口笛で吹いていた場面を見かけたときも「かっこいいな」と感じたことがあった。形姿はまったく決まったところがなくてどこにでもいるくたびれた雰囲気だったのだけれど、どういう音響効果が発生したのか口笛のメロディーが地下道の中で情緒たっぷりな音色で鳴り響いて一気に雰囲気がキマッたように見えたのだった。

 

 多分ぼくはああいう飄々とした様子のオジン(飄々としているのはその場だけかもしれないけど)に共感を覚えているからキマッてると思えるんだろう。とはいえこういう感覚は人それぞれだから他の誰かにとっては雰囲気ぶち壊しの騒音まき散らしに見えるかもしれない。とりあえず、将来暇になってハーモニカを吹くことになったとしたら河川敷か公園あたりで始めておこう。