かのやまさんのblog

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【読書メモ】読まずに死ねない哲学名著50冊

  まるっきり哲学を勉強したことのない人間がある日突然思い立ち、とっつきやすそうな本を何冊か仕入れて読んでみる。一通り読み終えたと思っていても半分以上は目が滑って眺めているだから要約もできない。地の文が難解なのもあるけれど、自我の問題・倫理の問題・美学の問題・宗教の問題・そのほか政治経済科学論理etc・・・と読み進めるごとにテーマが散らばり取っ掛かりがないのが判りにくさに拍車をかける。代表的な哲学思想を列挙した入門書を眺めて(読んでるとは言い切れない)いると時代によっての扱うテーマが変わっていることは何となくわかる。でも(本のチョイスがイマイチなのかもしれないけれど)、どうも頭にするっと入ってこない。

 

 ソクラテスの時代のテーマは「世の中の原理は何か」中世期は「神ありきの世界についての考察」18世紀から19世紀の近代には「自分とは、社会の秩序とは何か」と変わっていき20世紀になると近代のテーマをさらに推し進めた考察がメインになっている、というような大まかな認識はできているような気がするが、大まかなアウトラインはちらちら見えても細かなディティールになるとやっぱりあんまりわからない、という日々が続いていた。

 

 そんな中、ジュンク堂に平積みされていたこの本を購入。哲学の本らしからぬカバーイラストに目が行ってジャケ買いした部分もあるんだけれど、読んでみるとこれが中々面白い。古代から現在までの有名どころを要約してくれているのだけど、まずしょっぱなに歴史チャートが提示されている。これがまずありがたい。前の段落で書いたアウトラインがそんなに間違っていなかったことも判って一安心。

 

 そして、有名どころの哲学書についての要約と解説が供されるのだけど、いずれかの思想にのめり込むでもなく割とフラットな立場で紹介されている。そして、合間合間に見えてくる著者のスタンスが読んでいて何よりためになる。

哲学者の学説を評価する際には、その世界の一般的な世界像を考慮したうえで、その説がどのような関心から導かれ、どのような問題に答えるものだったのかについて着目する必要があるからだ。(140ページ)

 とか、

分にとって本当によい人生とは何か?どのような社会が、ともによく生きるための条件だろうか?この点に対する答えを与えるのは決して簡単ではない。しかし、これらの問いに真摯に向き合えば向き合うほど、あなたは自身の中に生きる先ほどの近代哲学者たちの息遣いを感じるはずだ。(460ページ)

 というように通り一遍で読んで終わりではなく、インプットした上で背景になる時代を把握し自分の答えを見つけるべきだと示し続けてくれる。

 

 読了した後は、関心を覚えた哲学について個別に掘り下げるか、この本に書かれているアウトラインをもとに自前で施策を進めるか。どっちにしても優劣を決めるものでもないだろうから、本書をベースにして自分なりに思想を突き詰めていけばそれだけで充分人生の足しになるだろう。

 

 ところで、入門書とかガイドラインと書いているけど元が元だから油断すると目が滑る箇所もある。なんせ原書が難解だから無理もない。例えば、引用されているキルケゴール死に至る病」の一説はこんな感じだ。

人間は精神である。しかし、精神とは何であるか? 精神とは自己である。しかし、自己とは何であるか? 自己とは、ひとつの関係、その関係それ自身に関係する関係である。あるいは、その関係において、その関係がそれ自身に関係するということ、そのことである。自己とは関係そのものではなくして、関係がそれ自身に関係することなのである。(211ページ)

 これを限られたページ数でかみ砕いてわかりやすく説明するのも簡単じゃないだろう。やっぱり入門書といえども繰り返し読む必要はありそうだ。

 

おまけ。

この本、カバーが二重になっていてイラスト入りの表紙とシンプルな拍子のどちらかを選ぶことができる。僕はブックカバーを使ってたからデフォルトのままだけど、好みによって表紙を選べる仕様なのでイラストが気になる人も安心の仕様ということだろうか。

 

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